猫化した道満をもふもふしてる顕光殿

 霊基異常というものはこのカルデアでクラスうちに時折耳にすることはあったが、まさか自分の主人たる道満がそれに当てはまるとは思いもよらなかった。

 膝の上でぐるぐると喉を鳴らす長い体毛の猫。猫の中でも大型に入るサイズのこれは、昨日まで人の形をした主人だったものだ。ダヴィンチ殿曰く、数日もすれば戻るレベルの異常であり後遺症も残らず、遅くとも1週間あれば復帰できるらしい。問題があるとすれば戦闘が出来なくなったことだろう。今の道満は猫にできることしか出来ない。サーヴァントのように戦場を駆け巡ったり、私を宝具として使役することも出来ない。

 撫でている訳でもないのに、この猫はずっとそばにいる。

 気まぐれに頭を撫でてみる。気持ちよさそうに目をつぶって、耳を横に倒している。

 ずっと猫のままのほうが些かマシかもしれない。でかい図体の主人の顔も美形ゆえ嫌いではないし、周回も呪いでストレスのはけ口になるので別段苦ではないのだが、このもふもふを手放すのは些か惜しい。

 ずっとこのままなら甘やかし続けられるのにな。人の姿の道満は甘えもするが凶暴すぎる。牙は剥かない、爪は立てないものの、それは自分に対しての話。他者に対してはあまり態度がいいとは言えず、甘やかすことは出来ない。

 ああ、残念だなぁ。そう思いながら限られた間味わえるもふもふを堪能した。


 数時間後、気まぐれに部屋を出た道満が厨房を漁って食料を引き出してはダメにしてしまったらしい。猫であっても道満は道満かと認識を改めた顕光だった。